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卒業生からみたシュタイナー教育。子どもや大人の好奇心を”引っぱりだす”授業の秘訣とは?

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たまたま声をかけてもらい、母校の公開授業に参加させてもらい、その後の座談会で卒業生として話す機会をいただきました。

公開授業って普通の学校もやっているのかなぁ

たぶん公立の学校ではないでしょう。

なぜ僕の母校が公開授業をしているのかというと、まだ日本では知名度が高くない教育実践を行っている学校だからです。

シュタイナー教育とは

このページを読まれている方はご存知かもしれませんが、シュタイナー教育について少しだけ紹介しておきます。

シュタイナー教育はオーストリア生まれの思想家であるルドルフ・シュタイナー(1861~1925)の人間観・教育観の理念に基づいた教育です。

人間の中に成長しつづけようとする意志と叡智が潜んでいることを洞察したシュタイナーは、新しい学校づくりを通して、一生の間学ぶことをやめず、社会に寄与する人間を育成しようとしました。

そして、その教育を「現代と未来のために必要な教育」または「自由への教育」と呼びました。

主な特色として、

  • 子供の成長過程を7年ごとに周期でとらえ、知・情・意の力が調和する心を育むこと
  • それぞれの学びが相互に関連する有機的なカリキュラム
  • 子どもと教員・子どもどうしのあたたかなつながりの中で人間の本質を学び取る授業形成

などがあげられます。

この理念に共感して人々の輪は増え続けて居り、現在では全世界に1000校を超えるシュタイナー学校があります。

まずは授業を体験してみよう

上記の説明は主に母校のHPを参照にして書いたものですが、やっぱりそれだけではシュタイナー教育のイメージが明確にはなりませんよね。

これを読んていられる方の中には、お子さんをどうやって育てていこうとか考えていらっしゃる親御さんや、教師をやっていて他の教育方法について勉強されている先生、または学生さんかもしれませんが、

そこには、様々な思惑があるはずです。

教育の一貫した思想や、それによって育つものを合理的に見定めたいという思い。

自分のお子さんに適した教育内容かどうかを感じ取りたいという気持があるかもしれません。

もちろんシュタイナー関連の本を読むことも勉強になるでしょうし、実際にオープンデイなどの学校公開日に足を運ぶことも有意義でしょう。

その中でも特におすすめしたいのが、公開授業に参加してみることです。

シュタイナー教育との関わり

本題に入る前に、少しだけ僕自身とシュタイナー教育との関わりを紹介しておきます。

僕はアメリカ、カリフォルニアのサンフランシスコというところで生まれたのですが、僕の自宅出産の際に手伝いにきていた助産師さんが、彼女の子どもをシュタイナー教育で育てていたことが僕の親がシュタイナー教育に出会うきっかけだったとか。

その後、幼稚園から1年生~9年生までシュタイナー学校に通っていました。

ひとつ留意点として、僕は、9年生(中学3年生)を終わったタイミングで普通の高校に進学したので、高等部にあたる10~12年生の学年は通いませんでした。

本来、シュタイナー教育は12年間一貫の教育としてカリキュラムが組まれており、各学年での学びが、さらに次の学年へと様々な流れをとって有機的に連動していくようになっています。

なので最後までシュタイナー教育で育ったとは言えないのですが、逆に一般の高校に行ったという経験があるので、一般的な教育と比較しながら話を進めていくことができます。

教科書がない授業

皆さんに公開授業をおすすめしたひとつの大きな理由は、授業内容自体はカリキュラム全般の思想を理解するよりも一般の授業と比較しやすいからです。

教育理念や、その求める将来像といったものは比較するのが難しいですが、先生の授業を聞く、もしくは参加するという形で自分がうけとるイメージや体験を自分が受けてきた教育の場と比較してみることで、シュタイナー教育の特徴や疑問点、よいところが見えてくるでしょう。

例えば、シュタイナー教育の授業では教科者がありません。

教科者の代わりになるのは真っ白なノート。

そこに生徒は自分の見やすいように先生の言ったこと、授業で感じたことをまとめていきます(小さいころは先生の真似から始まります)

最初は単色のクレヨンだけを使って、徐々に色や細さの違うクレヨンが増えてきて描けるものも変わっていきます。

最終的には自分だけのオリジナルのノートが出来上がります。

これは最終学年まで変わりません。(大学時代は自分の学習用にノートをとりますね。あんな感じを想像してもらえばいいかな)

公開授業で引きだされるもの

小学生や中学生の授業を聞く機会って授業参観以外ほとんどないですよね。

それも自分が受け手となれる機会は貴重です。

僕も、シュタイナー教育の授業を受けるのは実に10年ぶりでした。

懐かしくもありましたが、自分の受けてきた教育を改めて聞き直すことで、自分のキャリアを相対化できるいい機会になりました。

二つの授業があって、一つ目は社会科の授業、もう一つは音楽の授業でした。さすがに音楽の授業のほうは筆舌に尽くしがたいので、社会科の授業の様子について触れます。

大航海の東西~鄭和とコロンブス~

授業を行ってくれたのは柳澤先生。渋い声と深い瞼が素敵な先生。

この「大航海の東西~鄭和とコロンブス~」の授業は11年生(高校2年生)の航海実習の後に行われる授業です。

航海実習から大航海時代~カリキュラムの構成~

まず、なぜこの学年で大航海の東西というテーマを選ぶのかの話がありました。

コロンブスについての初出は7年生の頃。子供が自立心を芽生えさせ、親元や先生、子供どうしの関係性から踏み出すタイミングです。

大航海に出発するコロンブスはまさに未知の世界へと踏み出す子どもたちの情動になぞらえて登場します。

このとき、コロンブスの5度にわたるアメリカ大陸(コロンブスはインドだと思っていましたが)に伴う悲劇的な部分(アメリカのインディオ達を虐殺した歴史など)については扱いません。

そして成長し、十分に物事を多面的にみる力や社会に対する倫理観、正義感が育ってきた11年生になって、コロンブスの次の歴史の授業があります。

さらに、この授業の伏線として航海実習がありました。

航海実習は本物の帆船を駿河湾で航行させるという実習です。数学的な勉強をもとにした球体幾何学の知識を応用した海図の読み方、船の走らせかた、風の読み方などを勉強します。

波を切る舳先を見たこと、波音や塩水を浴びたことを思い出しながら授業に臨み、臨場感はさらに高いことでしょう。

カリキュラムはこのように相関する知識と体験を重視して構成されています。

東西の比較

コロンブスが自らの意志でヨーロッパの各王朝に西回り航路への資金や船を調達し、航海を重ねていた時代にさかのぼること約100年。

中国王朝でも明王朝の鄭和という宦官が永楽帝の命により、アフリカまでの大航海を達成しています。

コロンブスの船隊が、17メートルの船で3隻、乗組員120人だったのに対して、鄭和の船隊は120メートルの船は50数隻、延べ人数2万7千人の大艦隊。

同じ大航海でも、規模が全く違います。もちろん目的も違います。

コロンブスは香辛料を求めて、そして鄭和は明王朝の権威を各地に見せつけるための朝貢貿易の使いとして航海を行ったのです。

この学年では物事を様々角度からみること。つまり、東西のちがいや、目的の違いを学んでいきます。

人物のパーソナリティと自己のアイデンティティ

コロンブス以降も、ヨーロッパではイギリス、スペイン、オランダから数多くの船が出航し、大航海時代を迎えます。

一方で、鄭和と永楽帝の死後、中国からの大航海は行われませんでした。

なぜこの違いがうまれたのでしょう?

ひとつは動機、目的の違いです。

コロンブスは自らの意志でお金を集めて海に乗り出しました。それを見て、他の船乗りたちも我さきと続きました。

一方で、鄭和は艦隊をそろえてもらって航海に出ました。そして彼の死後は航海の意味はうしなわれました。

自らの意志で未来を切り開いていく人物像を生徒はコロンブスから学びます。鄭和からは上から言われたことを着実に達成する人物像を学びます。

同時に、コロンブスのように切り開いていく先に、違う角度から見れば犠牲がともなうことも学びます。

歴史上の人物に自分のアイデンティティを重ね、その自分を様々な視点から観察していくこと、これがこの授業の内容と子供の成長をリンクさせるもう一つのテーマなのです。

子どもの感性を引っ張りだす

やや駆け足ですが、シュタイナー教育の社会科の授業の感覚を少しでも理解していただけたでしょうか?

シュタイナー教育では様々な要素がリンクしあっています。

  • 学年毎の学びのフェースに合わせたテーマ設定
  • 航海合宿とからめた体験的な学習
  • 世界をマルチ的な視点から眺められる歴史学習
  • 歴史人物をロールモデルにした生徒のアイデンティティへの働きかけ

パッと思いつくだけでも、さまざまな意図が授業に隠されていることがわかります。そして、この授業もさらに次の実習などの布石になっていく。

そう考えると、教育カリキュラムが長期的なビジョンのもとに構成されていることがよくわかります。

僕自身も今回の公開授業を受けて、発見することがたくさんありました。

子どもだけでなく、大人にとってもとてもワクワクする授業です。

ぜひ、機会があれば行ってみてください。

これからも、ちょこちょこシュタイナー教育についても書いていけたらいいなと思います。

卒業後のキャリアなどについての考え方をまとめました。

シュタイナー学校を選ぶというキャリアについて。卒業生による考え方のヒント – 旅とてしごと

前の記事で、シュタイナー教育の公開授業を受けてみての感想について書きました。 公開授業の後に座談会で、僕も卒業生の一人として学校生活について簡単に話させていただきました。 公開授業には小さいお子さんをお持ちのお母さんや学校の先生もいらして、最後の質疑応答でも多くの質問がありました。 …

母校のHPも掲載しておきますね。

学校法人 シュタイナー学園

それでは。また!